2️⃣ 煙のない喫煙所 - 第二章 煙の出ない休憩
未来煙草は、拍子抜けするほど煙草だった。
未来煙草は、拍子抜けするほど煙草だった。
火をつける必要はない。銀色の棒をくわえて、先端の小さな点を押すだけでいい。煙は出ない。匂いもない。なのに、口にくわえた瞬間、身体のどこかが「ああ」と言った。
N氏は、会社の屋上でそれを試した。
屋上は、かつて喫煙所だった。今は灰皿も撤去され、床に残った丸い跡だけが、昔そこに何かがあったことを示していた。N氏はその跡のそばに立ち、未来煙草をくわえた。
吸い込んでも何も入ってこない。
それでも、肩の力が抜けた。
仕事のメールも、部長の顔も、会議で言い忘れた一言も、少し遠くへ行った。N氏は、これならいいではないかと思った。誰にも迷惑をかけない。肺にも悪くない。服も臭くならない。吸ったことを妻に隠す必要もない。