禁煙マスター JAENESKO

3️⃣ 煙のない喫煙所 - 第三章 なくなった昼休み

プレミアム ・ 禁煙文学部 ・ 2026-07-05 ・ 2分

煙草を吸っていないのに、煙草を吸っている気分になれる。これは発明だと思った。健康診断の問診票にも堂々と「喫煙なし」と書ける。妻も文句を言わない。会社でも席を立つ…

それから数日、N氏は機嫌がよかった。

煙草を吸っていないのに、煙草を吸っている気分になれる。これは発明だと思った。健康診断の問診票にも堂々と「喫煙なし」と書ける。妻も文句を言わない。会社でも席を立つ回数が減ったように見える。

実際には、彼は席を立たずに未来煙草を使っていた。

パソコンの陰で、会議の前に、資料を送ったあとに、誰にも見られず、音も立てず、匂いも残さず。

便利だった。

便利すぎた。

以前の煙草には、少なくとも面倒があった。喫煙所まで行く。ライターを探す。雨の日は濡れる。寒い日は震える。誰かと鉢合わせる。吸い終わるまで戻れない。

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