禁煙マスター JAENESKO

🖼️ 未完成美術館

プレミアム ・ 禁煙文学部 ・ 2026-07-05 ・ 22分

高円寺には、まだ何者でもない人間がたくさん住んでいる。

第一章 夢追い人用煙草

高円寺には、まだ何者でもない人間がたくさん住んでいる。

バンドマン。役者。詩人。映像作家。アクセサリー作家。自称批評家。元美大生。現フリーター。名刺には肩書きが多いのに、確定申告の職業欄では毎年少し迷う人たち。

ミナも、その一人だった。

彼女はイラストレーターを目指していた。

正確には、イラストレーターになる予定だった。予定は五年ほど続いていた。昼は駅前の古着屋で働き、夜は六畳の部屋で絵を描く。はずだった。

部屋にはスケッチブックがある。ペンもある。絵の具もある。描きたいものも、たぶんある。

ただ、夜になると疲れていた。

古着屋の店長に小言を言われ、客に「これもっと安くならないですか」と聞かれ、休憩中にSNSを開けば、同い年くらいの誰かが展示をしている。知らない誰かが、知らない場所で、ちゃんと前へ進んでいる。

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